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ブルーカーボン ③『藻場再生 1億粒の種まき』(明日への環境Lesson/静岡新聞)

 




流れ藻を回収する中学生ら=岡山県備前市日生町


 藻場を再生させることで海の豊かさを取り戻し、二酸化担当(CO2)吸収にもなる「ブルーカーボン」。今回は岡山県備前市日生(ひなせ)町で約40年前から取り組まれているアマモという海草の再生活動について紹介しましょう。


 同県の一番東に位置する備前市日生町は、カキの養殖やつぼ網(小型定置網)で有名な漁業の盛んな地域です。1950年代くらいまでは県の海域面積の1割以上が藻場と干潟で、瀬戸内海で産卵したサワラやタイ、イカ、トラフグの稚魚がこの藻場で育ち、巣立っていく豊かな漁場となっていました。


 しかし、埋め立てや干拓事業により藻場が消滅。日生でも、50年代に590haあった藻場が80年代には12haになってしまいました。


 そこで79年、漁師さんと地域の皆さんが研究を始め、85年からアマモの種をまき始めました。数少ないアマモから大事に花を摘み取って、秋まで置いて、選別してまくということを続けて、これまでまいた種は1億5千万粒以上! 


 カキ殻を散布したり、土のうのマットを使ったり、工夫も重ねています。その結果、種をまいてから20年で38ha、2021年には270haまでアマモ場が戻り、マダイやクマエビといった生物が増えてきているそうです。


 でも、アマモが増えることによって、大量の流れ藻が船のスクリューに絡まったり、漂着した藻が臭いを発したりするなどの問題が発生しました。その解決策として生まれたのが日生中学校による「流れ藻回収大作戦」。生徒が船の上から流れ藻を回収し、種を採り、秋には漁師さんと一緒に種蒔きを行います。今では、小中高の連携だけなく、林業や農業の皆さんも海の森づくりに参加しています。


 「今の海を少しでも良くして次の世代に引き継ぎたいからやっているのです」と、地元のNPO事務局長の田中丈裕さん。一粒一粒の種まきも、地域の人の思いと協働で大きな実を結ぶことを教えてくださっています。





 2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。



 


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