
人工物であるプラスチックごみは、自然環境の中にとどまり続けます。すでに海洋に出てしまっているプラスチックごみは、物理的に取り除くしかありません。
よく知られている取り組みは、日本でも各地で行われている「ビーチ・クリーン」です。海岸に打ち寄せられるごみを収集することで、海洋プラスチックごみを減らすことができます。熱海でも、熱海ビーチクラブ(代表:光村智弘)を中心に毎月行われています。
オランダでは、2013年、当時大学生だったボイヤン・スラットが「オーシャン・クリーンアップ」プロジェクトを立ち上げました。600メートルの長さのフローターを海面に浮かべ、その下についている3メートルの深さの裾部分でプラスチックごみをとらえて回収する仕組みです。
また、河川から海へのごみの流出を防ぐため、河川でのごみ拾いも重要です。米国メリーランド州のバルチモア市では地元のNGO団体が「ミスター・トラッシュ・ホイール」というプロジェクトを行っています。ジョーンズ・フォールズ・リバーの水の流れを利用して、水車のようなホイールを回転させ、水中のゴミを拾い上げ運搬船に載せるというもの。太陽光の電力を使うことで、エネルギー負荷も抑えています。
こういった世界の取り組みを熱海でもできないかと考え、私の会社では市内を流れる糸川の河口にネットを張って、川に流れてくるプラスチックごみを受けとめる「プラキャッチプロジェクト」を行っていました。魚の動きを妨げないよう、水面から1メートル、川岸から1メートルのところにネットを互い違いに張って、川から流れてくるプラごみをキャッチします(現在は水深が浅くなったため、活動休止中)
私たちが河口で船から身を乗り出してネットを張っていると、橋の上を通る人から「何の魚が取れるんですか?」と声をかけられます。「プラスチックごみを取っているんですよ」というと、皆さんびっくりされます。
誰もが使っているからこそ、誰もが取り組むことができるプラスチック問題。ぜひ皆さんも考えてみてください
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
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