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生物多様性 ② 『生態系サービスを享受』(明日への環境Lesson/静岡新聞)

 



 

 「生物多様性」という時の、「多様性」の意味についてもう少し詳しくみていきましょう。「多様性」とか「ダイバーシティ」という言葉を聞いたことがありますか? 「多様性」とは「さまざまな種類があること」ですが、生物の多様性とはどういう意味なのでしょうか?


 生物多様性条約では「生物多様性」を次のように定義しています。「すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他の生息又は生育の場のいかんを問わない)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」


 ちょっと難しい表現ですが、種内の多様性とは、いろいろな遺伝子があること。種間の多様性とは、生物の種類がいろいろであること。生態系の多様性とは、生き物の住んでいる環境がいろいろであること。


 「いろいろな種類の生き物がいること」や「いろいろな生態系(森林や海、川など)があること」が大事なことは、わかりやすいですが、「遺伝子の多様性って?」と思ったかもかもしれませんね。


 例えば「ジャガイモ」と言っても、いろいろな品種がありますよね。同じ品種のジャガイモでも、遺伝子が多様であることから、暑さに強かったり、ある病気に強かったり、という違いが生まれます。


 かつてアイスランドでは、収穫量の多い種子を選んで栽培を続けた結果、同じ遺伝子のジャガイモばかりになっていました。ところがジャガイモの疫病が海外から入ってきたときに、ジャガイモは全滅し、100万人以上が命を失う状況に。この疫病に強い遺伝子を持ったジャガイモもあったのですが、作られなくなっていたのです。遺伝子の多様性の大事さがわかりますね。


 そういった生物多様性から、私たちは「共有」「調整」「文化」「基盤」といったさまざまなサービスを得ています(図)。目に見える物だけでなく、病気を防いでもらったり、美しい自然から精神的な豊かさをもらったりもしています。


 「さまざまな生態系のもと、さまざまな種が、さまざまな遺伝子を有して生きていること」。私たちはそれらをすべて守っていく必要があるのです。



 



 2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。



 


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